ケルクショーズ・イリヤ 3号店(Quelque chose, Il y a - troisième)

Il solito tran tran(でも明日は何か新しいことを考えるだろうか……)

鬱と筋トレ、フランス語の「régime」という概念をはさんで考える

 フランス語の「régime/レジーム」を調べてみると、世界史とかで習った「統治方法」という意味のほかに意外な意味があることを知る。CNRTLという仏仏辞典から。

 

Manière habituelle d'agir, de se comporter; règles de conduite que l'on adopte (en particulier pour préserver ou recouvrer sa santé).
行為・行動するための日常的な方法、取り入れた行動のルール(とくにじぶんの健康を守ったり善くしたりするための)

 

 語源をたどるとラテン語の「regere」にあたるらしく、〈まっすぐにする〉というニュアンスが色濃く残っているように思える。

 

 フランス語におけるレジームは、体制、方法、ルール、計画、ダイエットなどを意味するが、どれも直線的で長期的な見通しかたをみちびくものである。わかりやすく英語では「regular」「direction」「rule」「right」「dress」「correct」「rectify」「erect」などが、この語源から派生したとされている。

 

 私の思いつきだけれど、うつ病には広義のレジーム(まっすぐにするための日常的な方法)が必要なのではないかと思っている。たとえば、筋トレの専門家であるtestosteroneさんは、筋トレをテーマにこう語っている。

 

『筋トレをする』という行為が、自己管理力の向上につながる。(…)筋トレは、せいぜい1日に45分間、長くても1時間くらいです。ただ、筋トレの効果が現れるかどうかは、実は筋トレをしている以外の時間にかかっています。極端なことをいえば、毎日筋トレをしても、3食すべてがファストフードだったら、体が引き締まるわけがありませんよね。筋肉がきちんと作られるようにするには、ちゃんと栄養をとらなくてはならないし、もちろん、夜、しっかり眠ることも重要です。
――cakes「筋トレで『うつ』対策を」より抜粋

 

 筋トレのベースにあるのはレジームだと思う。ダイエットもフィットネスもそうだけれど、〈メニュー〉というものを整えなければならない。朝起きて30分、就寝前に15分このトレーニングをやるとか、通勤途中は他のトレーニーとSNSで交流したり、最新のトレーニング法を仕入れたりとか、いろいろある。

 

 〈メニュー〉というレジームを導入するなかで、じぶんの身体の限界がわかったり、やった分だけかえってくる身体への信頼感が養われたり、失敗や達成の結果というものが確かなものだと知ったりして、それが人生全体に経験的な知識として反映されるんだと思う。

 

 筋トレ(ダイエット・フィットネス)というのは未来的でありながら、その日その日をはっきりと区別してくれる指標や数字でもある。現在進行系の不安に拘泥しがちな「うつ」の気を晴らしてくれるすぐれものなのではないだろうか。あくまで思いつきだけれど。

 

 ここからは思いっきり余談だけれど、最近『実況パワフルプロ野球2016(2017年度アップデート版)』を購入し、「栄光ナイン」というモードを仕事の合間にたのしんでいて、このなかに「レジーム」を感じていた。

 

 高校野球の監督になれるシミュレーションモードで、チーム全体の練習方針を決めたり、キャプテンを決めたり、プロ野球界に選手を推薦してくれるスカウトに自薦選手を伝えたり、練習試合を組んだり、逆に練習試合の依頼を受けたり断ったり、本を与えて選手の性格を変えたり、落ち込んでいる選手に休憩させたり、ちゃんと勉強もさせたり、試合で細かい指示を出したり、はりきってる選手に特別な練習をさせたり、時には任せたり、卒業生と交流したり、いろいろな〈メニュー〉がある。

 

 どうやったらじぶんの選手たちを全国大会(甲子園)に連れて行ってやれるのか、手札を見つめながら、変えられるものと変えられないものを見極めながら、ひとつずつ無理なく進行させてゆく。実際は、長くて険しい道のりなのかもしれないが、〈メニュー=レジーム〉があるかぎり、現在の不安に拘泥しなくて済む。

 

 それは決して最適化と同義ではないだろう。晴天戦略も荒天戦略も用意しながら、とつぜん生じる他流試合にも備える。自責と免責の両輪がバランスよくまわっていて、極端な負い目に自己をつぶされないで済むような、日陰のバリエーションなのだと思う。

 

 というわけで、明日からダイエットしよう。