ケルクショーズ・イリヤ 3号店(Quelque chose, Il y a - troisième)

Il solito tran tran(でも明日は何か新しいことを考えるだろうか……)

なんのためにお金を払うのか、小説家のファンにおける"pay to love"の支援はありうるか(pixivFANBOXにクリエイター登録しました)

※(校正者としての)ディスクレーマー:このブログでは「課金」を浸透している使い方(paid servicesに対するpaymentの意味)にもとづいて使っています。

 

 私が考えているのは「コンテンツにおける"pay to love"の在りかた」みたいなものである。"pay to play"は、私でもわかる。"pay to win"は、そういうのがあるのはわかる。

 

 きっと私が野球をやっていたとき、不必要にバットを買い替えたときの心理は、きっと"pay to win"だったんだと思う。あるいは、不必要に学参を買い足したときの心理も、もしかしたら"pay to win"だったかもしれない。

 

 だからそういうのはわかる。だけど"pay to love"というのは、サービスや仕組みをつくる上で非常にむずかしいと思う。おそらくは金を介しながら、金=愛にならないような仕組み上の「表象」が必要なんだと思う。

 

 pixivFANBOXでは、"pay for what"をどのように設計できるのだろうか。リワード系のクラファンシステムなら、"pay to get the reward"となるだろうけれど、お布施系の課金システムは、ファンがなんのために払い、クリエイターがなんのために受け取るのかマッチングするのがむずかしい。

 

 例えば、海外のインディゲームマーケットでは、"Humble Bundle"というサイトで、売り出されているゲームに対してファンが価格とマージンを決めることができるようになっている。こういう仕組みのなかでなら、「pay / paid」の質がマッチする。

 

 このサイトでは、もちろんゲームを買うから"pay to play"の課金なんだけれど、それ以上に、"pay to describe myself as a fan"ぐらいの感覚で課金されている。課金ランキング上位に入りたいという意味では、もしかしたら"pay to win / be a rank higher"なのかもしれないけれど。

 

 だけど、私の勝手な感覚からすると、これは"pay to be a rank higher"をデザインしてあげることによって、ファンが安心して課金できるのではないかと思う。つまり、ファンの気持ちとしては、"pay to love"の精神なんだけれど、"pay to love"というのはタブーでもある。愛と金というのは、別会計にしておきたい。でも、愛しているからこそ、お金を払いたい。そこをうまくズラしてくれているのが、Humble Bundleの課金システムなんじゃないかと思う。

 

 趣味で作ってるほうの書籍を一緒にやってくれている友人が、いまホストとして飯を食っているんだけれど、私の観測している範囲に限って言えば、"pay to play"のデザインしかしていないように思える。もしホストのような様態で課金させようと思ったら、"pay to love"の矛先を別の目的にすりかえるのがよいはずである。

 

 おそらくその最もわかりやすいところが、「店でナンバーワンホストになりたい/してあげたい」なんだろう。ミセデナンバーワン、という虚構の共通ストーリーに対して、ファン(客)は安心して愛を金で払える。

 

 逆に言えば、愛のかかったお金、あるいはお金のかかった愛は、受け取るほうによほどのキャパシティを要求する。店で5位か6位ぐらいの低順位で争っている彼も、現行の客から30万相当の愛は受け入れられないと思う。それが垂れ流されるシャンパンだったり、なんの生産性もない席料という仕組みのなかで生じる金だから、受け止めきれているのではないだろうか。勝手な予断だけど。

 

 話が往来しているけれど、pixivFANBOXという善意にみちあふれた支援ツールを、私たちはどのように使えばいいのだろうか。金と愛とか、金と支援とか、そういったものがもっともっと透明だったらいいのに、ファンとクリエイターにとっての愛と支援と金には、あまりに言語化しにくいためらいの香水がふりかけられている。

 

 試しに私が最初につくった課金プランは、カフェプランである。スタバのダークモカチップフラペチーノ®を飲みながら執筆したいので、490円のプランをつくった。ただ、これでは"pay to support"をほんのわずかにずらしたにすぎない。よほどハートの強いファンなら課金するだろうけれど、私だったら課金できない。明らかに課金の目的がダイレクトすぎるから。

 

 より厳密に言えば、課金による精神的な結果をこちら側に取り戻せないから。端的に言えば、課金が相手の負担になるから。ここをもっと課金する側に弾き返すようなデザインにしないといけない――店でナンバーワン、みたいなどうでもいい虚構のなにかで。

 

 その意味で、やはりホストという仕組みは素晴らしい。だれでもナンバーワンになりたいことになっているから。もちろんホストに課金しても、「タックス」という意味不明な税金がかかってほとんど店に回収されるから、実質的に素晴らしいかどうかは別だけど。

 

 これが、例えば小説家なら、「ベストセラー作家になりたい」を織り込んだところで、ファンにできることは課金することではなく、書籍を買ったり、レビューを書いたり、ファンレターを送ったり、イベントに足を運んだりすることだろう。なぞのタックスは発生しないが、ファンに応援できることもほとんどない。

 

 愛しているのに、愛せない。愛しているのに、金も払えない。もちろんリワードをつけて、リワードのために課金させるのが無難なんだろうけれど、別にファンはそういう焼畑農業的なことをするために課金したいのではないと思う。いわゆる「供給」があればもちろん"pay to play"とか"pay to get"をするけれど、"pay to love"がマテリアルを消費するだけでは足りないから困っているのである。言い換えれば、愛のやり場がシステム内で不足しているのである。

 

 マーケティングは、愛のやり場を用意できない。むしろ月額のサブスクリプションで、愛を固定費にしたがる動きさえある。焼畑を求めるひとには安上がりでいいかもしれないが、愛したいファンにとってサブスクリプションは違和感のかたまりである。

 

 さてさて、"pay to love"をズラすためのフィクショナルな目標を織り込めない「小説家」というクリエイター存在を支援するための課金システムというのは、どうデザインするのがよいのだろうか。あるいはpixivFANBOXでそれを実現するとしたら、どのようなプランをつくるのがよいのだろうか。そのマーケティング課題を、作家個人が負うにはあまりにもしんどいだろうし、pixivに丸投げするのもむずかしい(そういう会社じゃないから)。

 

 もしそれを発明できれば、ファンを救うことにもなる。もしかしたらジャニーズとかはそういうのクリアしているのかもしれない。私からするとマテリアルとコンテンツの圧倒的な供給と焼畑っていうイメージだけど。まあ、とにかくどういったFANBOXプランなら"pay to love"の問題を解消できるのか、いろいろやってみたいと思う。