イベントを主催したい、主催者とは「大人の人」のベストエフォートを訓練したひとのこと

 中学生のときの社会科見学だったか。事あるごとに点呼確認があって、当時あまり好きではなかった体育教師が、ペアノが公理化した自然数を使って40までラフに数えていく。休憩をはさむたびに、自由行動があるたびに、ときどきじぶんで数がわからなくなって1から数え直すこともあった。

 

 それが非常に面倒くさかった記憶がある。いまから考えると、中学生の無知を最大化したような話だなと思う。なぜなら、彼には、ごく一般的な安全配慮義務が課せられており、それを果たそうと尽力していたのだから。つまり、端的に言えば、あの体育教師は「大人」だった。

 

 以前、2ch(現「5ch」)のスレに「奥様が墓場まで持っていく黒い過去【黒の7】」というのがあって、そのなかで印象的なことを言っていたネラーがいた。長いけど引用する。

 

中学生の頃の話。自転車で帰宅途中に、本当に狭くて細い道を通っていたら同い年くらいの男の子が倒れてて、頭から流血してた。通りかかったら「誰か大人の人を呼んできて」と声を掛けられ私は冷静に「うん、ちょっと待ってて。」と言ってその場を離れたもののなぜか急に怖くなってきて、大人の人を呼ぶどころか「あqwせdrftgyふじこlp;ああああぁ!!!!!」と興奮状態で変なことを絶叫しながら、自転車でそこら辺を走り回りもちろん大人を呼ばないまま帰宅して何事も無かったかのようにテレビおじゃマンボウを見たものの興奮は納まらず・・・。ケガ人を見捨てて帰ったなんて、人として最悪。数週間後、男の子の元気な姿を確認出来たのでちょっとホッとしたけど。(419: 可愛い奥様 2010/02/03(水) 01:48:25 ID:3JkCIfoP0)

 

 大人と呼ばれる年齢になってからというもの、「大人の人」というときの「大人」の定義というのは非常に非常に狭いのだと痛感する。いちばん広い定義の大人には、ほとんどだれでもなれるけれど、非常事態に呼び出される「大人の人」というのは、1%もいないのではないかとさえ感じる。

 

 イベントを主催するときの「主催者」とは、この「大人(の人)」の定義よりもさらにグレードアップされた大人でなければならない。「大人の人」が叩き出すベストエフォートを訓練していなければならない。ひとつの法的(制度的)な理想論として。

 

 災害時の避難経路、子どもでもわかるイラスト、目立つ場所にあるかどうか、動線計画、非常灯、暴力団・テロの対策、盗難の対処、ハッキングなどによる情報流出、怪我や病気の対処、食中毒、アレルゲン確認、急性アルコール中毒、AEDの位置や使いかた、救急車の進入道路の誘導、火災報知器・消化器の位置、消化器の使用期限、その他のエマージェンシーアクションプラン(緊急連絡先やマップ)、ファーストエイドキットの設置、救護室の確保、参加者間トラブル、老朽化の確認と対策、立入禁止区域の表示確認、設営時の事故、参加費などの横領や着服、会場設備の破壊、有害動植物の確認、落下・転落防止、廊下や玄関の十分な照度の確保、天井裏のハウスダウスなどの喘息予防……。

 

 これ以上にたくさんの(時には予期せぬ)安全確認事項がある。

 

 2015年のモンストのイベントで、野外の列から11人の熱中症患者が出たというニュースがあった。主催者のミクシィは、モンストのオフィシャルサイトに謝罪文を載せた。一部を引用する。

 

昨日、8月2日に幕張メッセにて開催した「モンストフェスティバル2015」において、会場の収容可能人員数を大きく上回るお客様がご来場されたことにより、長時間にわたり並んでいただいたにも関わらず入場いただけないという事態が起きましたこと、まことに申し訳ございませんでした。体調を崩されたお客様にも素早く十分な対応をとることができなかったことに加え、入場に関する情報などの提供が遅く、会場および会場周辺の案内が不十分であったため混乱を拡大してしまいました。これは私どもの想定の甘さと運営の未熟さによるものであり、深く反省するとともに、今回のイベントを楽しみに来場されたみなさまに心よりお詫び申し上げます。

 

 午前中のうちに並んでも入場できないとアナウンスがあったのに並んでいたユーザーが悪いのか、「入場に関する情報などの提供が遅く、会場および会場周辺の案内が不十分であった」ミクシィが悪いのか、私は専門家ではないのでわからないけれど、主催者の担っているものの大きさがすこしだけ感じ取れる。

 

 責任者が負っている「安全配慮義務」というのは、しかしながら、全体像がよくわからない。「受託者に課せられた義務 fiduciary duty」のようで、「善管注意義務 the due care of a prudent manager」のようでもある。

 

 おそらくだけれど、ディスクレーマー(免責事項)を告知すればいいというだけの話でもないのだろう。「イベント中に生じた窃盗について一切の責任を取りません」としたところで、安全配慮義務の責任から解放されるというわけではないと感じる。免責について全くわからなかったので、詳しそうな弁護士さんに相談してみようと思う。

 

 小さいイベントを開きたいんだけど、小さいからといって安全配慮義務を放棄していいってことではないので、詳しいひとに相談して、じぶんでも勉強して、応急処置をラーニングして、一緒に支えてくれるスタッフにも共有・教育して、「大人の人」のベストエフォートで参加者を損なわないように運営できればいいなと思う。